三日月(@trickwolves)です。
2018年の10月末で動物園を退職したので、飼育員ではなくなってからほぼ1年になります。
この1年間は飼育員の待遇を改善したい、という気持ちは抱きつつも特に何か活動はできませんでした。ちまちまブログを書いたり、ツイッターに投稿したりはしていましたが、具体的な行動は起こせずじまいでした。
そこで改めて訴えたいことがあり、久しぶりに記事を書いてみます。
衣食足りていない状態では動物の命は守れない
日本中の動物園では今日も明日も、多くの臨時職員の飼育員が動物たちの命を預かっています。
何度も訴えていますが、臨時職員は非常に薄給です。貴重な動物の命を預かる飼育員が日々の生活で手一杯、明日をも知れぬ暮らしをしています。
動物関係の仕事は不確定要素が多いため、残業や早出も当然とされて残業代もつかないことがほとんどです。
残業代もつかない仕事を必死でこなし、食費を切り詰め、ろくに遊びに行くこともできず、同僚とご飯に行くことすらできず…多くの臨時職員の飼育員たちは、そんないっぱいいっぱいな状態です。
そんな状態で自分以外の生き物の命を守ることができるのでしょうか?
そんな状態で自分の持てる力を100%発揮することができるでしょうか?
人間は「やりがい」ではご飯は食べられません、「やりがい」ではお腹は膨れません、「やりがい」では服は買えません。
事故が起きるのは飼育員の質の問題もあると思う
2018年と2019年を振り返ってみると、全国の動物園で多くの事故が発生しました。人の命が失われたり、動物の命が失われたりする悲しい事故が多発しました。
平川動物公園のホワイトタイガーの事故、多摩動物公園のインドサイの事故、天王寺動物園のグラントシマウマの事故…こうも事故が続いてしまうのは、飼育員が置かれている環境も少なからず関係している様な気がしてなりません。
臨時職員は期限付きの雇用なので、当然定められた期間しかその園で勤務できません。実務経験があり、実力がある飼育員であっても期限内に正規職員になれなければそのまま園を去るしかありません。
現状飼育員が置かれている環境では、どれだけ有用な人材でも雇用環境の問題で園にいられないということが起こっています。(そもそも正規職員への登用がない園もあり、私が知る限りでは最大まで雇用を更新しても5年程度の園が多いように思います。)
そして臨時職員の問題は、正規職員にも影響を及ぼしているように思います。臨時職員が辞めて新しい臨時職員が入ってきたら、彼らを教育するのは正規職員の仕事になるからです。
- 5年(仮)ごとに新しい人材を育てなければならない
- どれだけその人材にノウハウを教えても、結局園の人材にはならない
こんな環境の中で、新人を教育している間のしわよせの多くは正規職員に行ってしまっているようにも思います。
この負のループが全ての職員を疲労させ、仕事の質を悪化させ、事故が多発する一因となっているのではないでしょうか…?
全臨時職員の雇用環境改善を強く望みます
正直なところ飼育員だけではなく、臨時職員という立場の人はみな劣悪な雇用条件で日々を暮らしています。
世の中には臨時職員という職のお陰でなんとか働けている、食いつないでいる、あこがれの施設で働くことができているという方もいらっしゃるのかもしれません。
しかし現状、圧倒的にやりがい搾取をされている方が多いと考えられます。「臨時職員 ブラック」「臨時職員 辞めたい」などと検索すると、当事者たちの悲痛な声が見えてきます。
手取り10万ちょっとでは、現在の日本での健康で文化的な最低限度の生活を送ることはできません。
元臨時職員だった人間として、臨時職員の雇用環境改善を強く望みます。
さいごに
動物の命を守るため、人の命を守るため。
今後“臨時職員の飼育員”の数が減ることを、心の底から願っています。
飼育員の置かれた環境をなんとかしたい、動物園が良い方向に向かっていてほしい。そう思いつつも、飼育員を辞めてほぼ1年経った今でも具体的にアクションを起こす方法が見つかりません。
まずは1人でも多くこの現状を知ってもらえればと思い、インターネットの片隅にこの記事を置いておきます。