動物について

元動物園飼育員から動物園好きの皆様へお願いしたい、動物福祉に関すること

三日月(@trickwolves)です。

昨日NHKラジオ第一放送にて「畜産と動物福祉 あり方が問い直されている」という非常に興味深い内容の放送がありました。Webでも聞けますので興味がある方は是非聞いてみてください。
2018年12月11日(火)放送 過去の「特集 一本勝負」を聞く




動物園動物たちももっと幸せになる権利がある、と思う

日本は動物福祉に関しては後進国といってもいいほど動物に関する法が全く整っていません。

ヨーロッパやアメリカの一部など海外では採卵鶏(食用の卵をとるための鶏)のケージ飼いが法律によって禁止になっていたり、動物虐待に関する相談ができたり虐待されている動物の保護をする権利を持ったアニマルポリスと呼ばれる団体があったりと日本では想像もつかないほど「動物の権利」が考えられているのです。

そう、海の向こうの国々では最終的にと殺される運命にある畜産動物に対してさえ動物福祉が声高く叫ばれているのです。そして消費者もそれを当然のこととして受け取っているのです。

スターバックスやマクドナルドなどのアメリカ系の大手チェーン店は2020年までに使用する卵を全て平飼いのものにする・・・と2015年の地点で発表しています。
参考URL:
https://jp.reuters.com/article/starbucks-eggs-idJPKCN0RW08920151002
https://www.dailysunny.com/2015/10/05/nynews1005-17/

日本ではまだそこまで考えられる環境が整っていません。

ですがせめて、死ぬまで守り育てられる運命にある動物園動物に対する福祉の方からでも動物を取り巻く環境を整えていけないものかと強く思います。

正直以前勤めていた動物園では動物福祉もなにもありませんでした。

こんな動物園もあるんだということを知ってほしい、そしてそういったものを目にした際は願わくば声をあげて欲しい、と思いこの記事を書きます。

勤めていた動物園はこんな環境でした

動物の寝室に冷暖房器具がない

極端に暑さ寒さに弱く、気温の変化が死につながる可能性がある動物については冷暖房を設置していました。

しかしなんとか耐えられる動物については、そういった配慮がありませんでした。

エアコンがあった動物
レッサーパンダ

ヒーターがあった動物
リスザル、インコ・オウム類、カメ類、ハリネズミ、ミニブタ

エアコン・ヒーターがなかった動物
ウサギ、モルモット、マーラ、ニホンザル、プレーリードッグなど

ウサギやモルモットだって暑いものは暑いし、寒いものは寒いはず。でもスペースや予算の関係で冷暖房を入れてもらえず、彼らは夏も冬も大して日光の当たらない部屋でじっと過ごすほかありませんでした。

2018年はあまりにも猛暑だったのでサーキュレーターだけは購入してもらえましたが、あの暑さを扇風機だけで乗り切ろうと考えるのは無謀の一言であったと思います。

2018年の暑さは異常といっても良いものでした。

人間ですら5~9月の間に92,710人が熱中症と思われる症状で搬送され、そのうち159人が亡くなっています。(参考URL:http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h30/10/301025_houdou_3.pdf

動物にとってもあの暑さは辛いものだったでしょう。

数匹の動物が恐らく熱中症だと思われる症状で死にました。恐らくというのは死因すら調査しなかったため、あくまで推測で物を言うしかなかったのです。(次の項目で書きます)

熱中症対策をしてくれない職場からお送りする現場レター三日月(@trickwolves)です。 7月になってからというもの、暑くて暑くてしんどい日が続いていますね。 中の人は現在現場...

ちなみにこちらは動物福祉に注力している福岡県・大牟田市動物園のモルモット舎です。11月末に訪問したところ、既にヒーターが設置されていました。またワラやチモシー、落ち葉や木の枝やトンネルなど色々な素材が置かれモルモットが好きに移動できるように配慮されています。(モルモットが自分の意思で動ける環境に感動しました。)

本の名前は忘れてしまったのですが、動物園業界には数十年前に発行された飼育員の心得を書いたガイドブックがあります。

その中では”海外産の動物であっても冷暖房を使って甘やかすのではなく、日本の気候に慣らすべき”といったことが書かれていました。確かに日本で生活させる以上日本の気候に慣らした方が良いかもしれませんが、エアコンや暖房が全くないのは現代の動物福祉的に問題ではないのでしょうか。

その本はかなり古いものですが、今も使える知識がたくさん詰め込まれていました。その反面、現代の動物福祉にそぐわないこともたくさん詰め込まれていました。

正規の飼育員は辞めない人が多いため、今もこの考えを軸に置いている人が多いのかもしれません。少なくとも私の上司は完全に古い考えを正しいと思っている人でした。

専属の獣医がいない

小さな動物園でしたので園の専属獣医さんがいませんでした。

近所の動物病院の獣医さんが数週間に1度巡回しに来るだけ。必要な薬はその時に持ってきてもらうか、自分たちで取りに行くというなんともアナログスタイルでした。

以前も命の価値は平等ではないという記事を書きましたが、ウサギやモルモットなど単価が安い動物はほとんど積極的な治療をせず経過観察をするのみでした。

動物の命の重さは平等なんかじゃない、一動物園飼育員の悲しみ私の務めている動物園では動物が亡くなったことを基本公表しません。 一飼育員である私はそんなのあり得ないと思っています、同僚も同じく...

急患が出ようが病気が悪化しようが、動物病院の定休日だったりあるいは獣医さんの都合がつかなければ飼育員は動物を見守ることしかできませんでした。ヒーターをつけたりタオルを引いてなるべく寒くないように痛くないようにして…そして見守ることしかできませんでした。

獣医さんはとても良く動物たちのことを考えてくれました。たくさんのことを教えてくれました。それでも、もしすぐに見てくれる専属の獣医さんがいたならあるいは助かったかもしれない。そんな命があったことは確かです。

また動物が亡くなっても死因の調査は一切行われませんでした。大きい園では希少な動物が亡くなった際は解剖を行い、その死因を調べて他の動物たちの飼育に生かしていくものですがそういったことは一切ありませんでした。

亡くなった動物はその日に園内に埋めるか、あるいは冷凍庫に入れておいてまとめて埋めていました。埋めることが難しい大きい動物については、焼却場に持って行って燃やしていました。

人も動物も、死んで生命活動を止めた肉体はすさまじいスピードで劣化し腐っていきます。生きていてもすぐに診察してくれる獣医さんがいない環境では、とても解剖や調査をしてもらうことなんてできませんでした。

衛生面について考えられていない

これは私がいた園だけではなく該当する動物園も多いと思うのですが、園内には踏み込み槽や消毒マットなどがほとんどありませんでした。

最近豚コレラが広がっているというニュースを良く耳にしますが、動物が関連する病気は大きく2つに分けられます。

①豚コレラのように豚やいのししなど特定の動物だけがかかる病気と、②狂犬病のように動物も人もおかまいなしにかかる病気人獣共通感染症といいます)があり、人畜共通感染症も少なくありません。

元々は養豚に携わっていたため防除防疫をして当然だと思っていたのですが、踏み込み槽や消毒マットを用意している動物園はほとんどないように見受けられます。後々は慣れてしまいましたが、就職当初はあまりにも消毒関係がなさすぎて強い違和感を感じていました。

鳥インフルエンザを防ぐためにバードゲージ入り口にマットを用意している園は多いものの、ブタやイノシシ系の動物付近にこういったものが用意されている園を見たことがありません。

国内で豚コレラが騒がれている現状です、どの園もなるべく先手を打った方が良いのではないでしょうか。外国人の旅行客が増えているという観点から見ても、動物エリアに入る前に靴の裏くらいは消毒して貰った方が良いのではないでしょうか。

動物園にいる動物たちを幸せにするためにできること

私たちができることは動物園に対して環境改善をして欲しい、としっかり言葉にして伝えることです。

動物園に遊びに言った時にこれはおかしいとぞ、思うことがあればぜひお客様の声や意見ボックスに意見を入れてください。(特に公立の施設であれば)市民県民の声は上層部が無視できない力を持っています。

ただし何も調べず考えず、ただ自分の感性だけで文句を言うのは残念ながらただのクレーマーです。

動物の生態をきちんと調べて、そのうえでその動物が飼育されている環境が動物にそぐわないものであると思ったらぜひ”なぜ・なにを・どのように改善すべきなのか”という建設的な意見を伝えてください。

元現場の人間からのお願いでした。

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三日月
三日月
静岡県在住のフリーライター。サプリメントや動物、オタク業界に強いアラサー♀。お仕事の依頼や問い合わせはお問い合わせフォームからお願いします。

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