三日月(@trickwolves)です。
先日名古屋の繁華街でアライグマが目撃され、そのうちの1匹が捕まったと言うニュースが世間をにぎわせています。
このアライグマは解剖されて何を食べていたか調査をするとのこと。何を食べていたかわかれば、アライグマたちがどのあたりに住んでいるかわかるかもしれません。
ツイッター上では案の定「アライグマが可哀想だ」「殺処分反対」と言い、役所や関連施設に問い合わせをしている方が多く見られました。
でもね、動物関連のことって感情論だけではなんともならないことも多いんですよ。現実問題捕まえたアライグマを全部飼ってたら破産しちゃいます。のでアライグマはどんなやつなのかを解説してみようと思います。
北米原産のアライグマがなぜ日本にいるのか
アライグマは本来北米からメキシコ辺りに生息している動物です。
良い毛皮が取れること、(某アライグマのアニメの影響で)ペット向けとして日本をはじめあちこちに持ち込まれ、各地で野生化して問題となっている動物でもあります。日本では特定外来生物に指定されている、在来の生態系を破壊する可能性がある動物です。
特定外来生物とは、在来の生物を補食したり、生態系に害を及ぼす可能性がある生物のこと
アライグマは在来種でいえばタヌキに近い姿や食性をもっていますが、気性が非常に荒く攻撃的です。小さなころは人に良く懐きますが大人になると気性の荒さが際立ち、とてもペットとして個人が飼育することなど出来ないと聞きます。
そして飼いきれず困った人や元々野生の動物だから自然の中で暮らす方が幸せだろうと考えた人がアライグマを野に放ってしまい、日本の気候に順応したアライグマが爆発的に増えてしまい今の状況になってしまったのです。
アライグマを殺処分しない方法はないのか
実際問題、殺処分する以外の方法はないと思います。
名古屋のアライグマ殺処分の件、案の定可哀想って感情論が多い。可哀想だけど、ではそのアライグマを察処分せずどうする?アライグマは本来日本にいてはいけない動物です、野に返せば本来日本に住んでいる希少な動物が喰われてしまうかもしれない。農作物を荒らす可能性も高い。
— 三日月@動物イラストレーター (@trickwolves) 2018年12月6日
野生由来の個体ではどんな病気や寄生虫を持っているかわかりません、動物園で引き取るのも簡単なことではないのです。引き取って終わりじゃない、検疫してその個体が住む場所を作ってその個体が死ぬまでの健康管理とエサの用意をする…現実問題おいくらかかるのか想像するのもしんどい。
— 三日月@動物イラストレーター (@trickwolves) 2018年12月6日
可哀想だ殺処分するな!と抗議するのは自由です。ですがその先は誰かどうするのか考えて欲しい、抗議した方が責任もって死ぬまで飼うなら良いけどそもそも特定外来生物ですし性質上飼うことすら難しい生き物なんです。こういった問題は感情論だけではどうにもなりません。
— 三日月@動物イラストレーター (@trickwolves) 2018年12月6日
私も動物好きの1人ですし、もちろん可哀想だとは思います。だけれど実際の問題として、野生のアライグマを飼っておける施設なんてそうそうないのです。
一般の人が引き取ることはできないのか
前述のとおりアライグマは非常に気性が荒いため、一般家庭ではまず飼養することが出来ません。
また特定外来生物であるため、余程の理由と施設が無い限り飼養する許可が下りないのではないかと推測されます。
動物園で引き取ることはできないのか
では動物園や動物関連施設はどうだ、となりますが平成26年の北海道だけでも6933頭のアライグマが捕獲されているのです。アライグマ6000頭を健康的に守り育てられる施設が日本にあるでしょうか。1匹2匹保護したところで残る5999匹はどうしたら良いのでしょうか。(情報源:アライグマの生息市町村数と捕獲数等の推移)
動物園に保護されたとしてもそれで終わりではないのです。まずアライグマがどんな病気や寄生虫を持っているか調べなければなりません。もし変な病気を持っていて他の動物たちにうつってしまったら大変だからです。そしてアライグマが逃げ出さないような檻が必要です、毎日食べさせる餌が必要です、病気になってしまったら治療代が必要です。
保護するのか簡単です、殺処分反対と言うのも簡単です。
ではアライグマを終身飼養するためのお金は誰が払うのですか?
特定外来生物は何をするのも大変なんです
特定外来生物に指定されている動物は法的に色々な制限があり、動物園で飼うのも簡単ではありません。都度飼養許可を得なければなりませんし、万一逃げ出してしまうようなことがあれば大目玉です。どんな規制があるかは以下を見て頂ければと思うのですが、特定外来生物は野に放つこともできません。
つまり八方ふさがり、捕まえたアライグマは殺処分するほかないのです。
特定外来生物に指定されたものについては以下の項目について規制されます。
飼育、栽培、保管及び運搬することが原則禁止されます。
※研究目的などで、逃げ出さないように適正に管理する施設を持っているなど、特別な場合には許可されます。
※飼育、栽培、保管及び運搬のことを外来生物法では「飼養等」といいます。輸入することが原則禁止されます。
※飼養等をする許可を受けている者は、輸入することができます。
野外へ放つ、植える及びまくことが原則禁止されます。
※放出等をする許可を受けている者は、野外へ放つ、植える及びまくことができます。
許可を受けて飼養等する者が、飼養等する許可を持っていない者に対して譲渡し、引渡しなどをすることが禁止されます。
販売することも禁止されます。許可を受けて飼養等する場合、特定外来生物ごとにあらかじめ定められた「特定飼養等施設」内のみでしか飼養等できません。
可哀想では済まない問題があることを知ってほしい
ここまで今回のような件でアライグマを殺処分する以外の手段を取るのが難しい、というお話しをさせて頂きました。
先程も述べましたが、アライグマは日本在来の生態系を破壊する可能性があることから特定外来生物というものに指定されています。
現状野生化したアライグマたちは野菜や果物畑を荒らし、農家の方の生活を脅かしています、ニホンザリガニやエゾサンショウウオなどの貴重な生物を食害しています。(参考資料:特定外来生物の解説・アライグマ)
悲しいかな、日本固有の動物たちを守るため、人間の生活を守るため。できることならば、日本の国内から根絶させなければならない存在なんです。
アライグマは確かに人間によってもたらされたにも関わらず今や迷惑な存在として扱われる被害者です。可哀想かもしれません。外来種たちはまだ野生動物とのかかわり方がある程度確立していなかった時代の、人間によってもたらされた負の遺産です。
ですが、だからといってこのままの状況を見過ごせば日本に昔からいる動物たちの方が絶滅してしまうかもしれません。だから昔の人間たちの過ちを今の人間たちが修正していかなければならないのではないでしょうか。
それでも、アライグマを殺すことは悪でしょうか…?
動物を取り巻く問題は感情論だけではどうにもならないこともある、ということが伝われば幸いです。疑問やつっこみ、反論などありましたらツイッターからご連絡下さい。
ちなみにあらいぐまラスカルにおける人間とアライグマ幻想といっても差し支えありません。実際アライグマをペットとして終身飼養した方が本を出されていますので、興味がある方は是非読んでみてください。