こんにちは、みかづき(@trickwolves)です。
今回は少し思う事があり、昨年5月に書いた「元飼育員が語る:コツメカワウソをペットにしないで・飼わないで欲しい理由4選」の第二弾として、元飼育員である筆者がキバタンやタイハクオウムなどの大型オウムを飼わないで欲しい理由をお話していこうと思います。
大型オウムとはなんぞや
オウムはオウム目オウム科に分類される鳥類の一種で、21種が属しています。
オウムとインコは見た目が非常に似ていますが、インコはオウム目インコ科に分類されている鳥類です。基本的に頭に「冠羽」(かんう)と呼ばれる長い羽毛がある種が「オウム」、冠羽がない種が「インコ」と覚えると見分けやすいです。
この記事でお話をしていく「大型オウム」とは文字通り体が大きなオウムのことですが、この“大型”という言葉については体重○○g以上や体長○○cm以上など、明確な定義はないようです。
大型オウムを飼うべきでない理由1・クチバシの力がものすごく強いこと
それでは早速、私が大型オウムを飼育すべきではないと考える理由を1つずつお話していきます。
最初にお話する理由、それは「大型オウムたちのクチバシの力があまりにも強すぎる」ということです。大型オウムの多くは果実や種子を食物にしていて、その硬い殻を剥くためにものすごーく力が強く、大きなクチバシを持っています。
ペットとして大型オウムを飼育すると、ほぼ確実に木製の家具はボロボロになります。ベニヤ板であればまるで人間がウエハースのような柔らかいお菓子を食べるくらいの気軽さで、角材であっても少しずつかじってあっという間にボロボロにしてしまうのです。
私が勤めていた園には、2羽のキバタンがいました。どちらも事情があり、動物園が自主的に導入した個体ではなく、引き取られる形で園に来た子でした。私はそのうちの1羽に親指の腹を噛まれたことがあります。
その子の名前を仮にRと呼びますが、Rはあまり人間が好きではなく、攻撃的な部分がある個体でした。恐らく過去に人間から嫌な思いをさせられたことが原因だとは思われますが、不用意に近づこうものなら突こうとしてくるため、常に用心して関わっていました。
それでもなんとか仲良くなろうと少しずつ距離を縮めていったところ、ある程度気を許して触らせてくれるようになりました。そしてだいぶお互いに慣れたな、などと少々油断した矢先のことです。いつも通り掃除をしていて、近づいてきたRに触れようとした瞬間、親指の腹をがぶりと噛まれたのです。
とっさの出来事に本当にびっくりしましたが、Rには攻撃する気や悪気はなかったようで、私から見ると「やべっ…!」という表情をしていたように見えました。
思いのほか傷は早く塞がりましたが、噛まれた当日は指が猛烈に痛かったです。またRに悪気がないのはわかっていましたが、どうしてもしばらくの間はRに手を近づけることが怖かったです。
大型オウムを飼うべきでない理由2・鳴き声が大きい
大型オウムを飼うべきでない理由の2つ目、「それは鳴き声が非常にやかましいこと」です。
オウムやインコの仲間は仲間とのコミュニケーションに声を使うのですが、その鳴き声は非常に大きく良く響くのです。
特にキバタンやタイハクオウムの雄叫びはとんでもないやかましさで、彼らが雄叫びを上げようものなら普通の集合住宅では100%を超えて1000%、いや10000%確実に、近所の方からクレームがきます。
では一軒家であればいいのかというと、そうもいかないのが実際のところです。広い敷地にぽつんと立っている住宅であれば問題がないかもしれませんが、住宅街など住宅と住宅の間が狭い場合は、大型オウムたちの声はほぼ筒抜けになってしまう可能性が高いと思われます。
彼らの鳴き声がどれだけ大きいのか知りたい方は大型オウム、それもできれば良く鳴く個体を飼育している動物園に行ってみてください。実際に聞いてみると、「こんなに大きいの!?」、「こんなに遠くまで聞こえるの!?」と驚くことでしょう。
大型オウムを飼うべきでない理由3・ストレスに弱い
3つ目の理由としては、「大型オウムたちが非常にストレスに弱いこと」を挙げます。
元々オウムは群れで暮らす習性があり、仲間やパートナーとの密接なコミュニケーションを好みます。人間と暮らす場合もその習性は変わらず、人間を群れの仲間だと思って密接なコミュニケーションを求めてきます。
オウムたちは十分に構ってもらえず、暇な時間が続くと自分で自分の羽根を引き抜いてしまう「毛引き症」(けびきしょう)を発症することがあります。毛引き症を起こすと羽根が無くなるため地肌が見えてしまい、なんとも痛々しい見た目になってしまいます。
また見た目だけならまだしも羽根を引き抜いた部分から出血することがあり、さらに羽根を引き抜くだけでは止まらず、自分で皮膚を傷つけてしまう「自咬症」(じこうしょう)に発展することもあるのです。
毛引き症は正直なところ、一度発症してしまうと完治させることが難しい症状です。動物園で飼育されている個体でも比較的よく見られるため、気になる方は動物園でオウムやインコの胸元などをよく見てみてください。
以上の理由から、私は常に家に誰かがいる環境でないと大型オウムを健康的に、長期間飼育することは難しいものと考えます。さらに常に誰かが側にいて、かつ構ってあげられる環境でないと、毛引き症の発症を避けることは困難でしょう。
留守番させる時間が長い方は人間のためにも鳥のためにも、留守番に耐性がある動物種を迎えることを強く強くおすすめします。
大型オウムを飼うべきでない理由4・寿命が長い
4つ目の理由としては、「大型オウムたちの寿命があまりにも長いこと」を挙げます。
大型オウムは非常に寿命が長く、数十年単位で生きる種が少なくありません。例としてキバタンの寿命は野生下で20~40年、飼育下では40~70年といわれています。
参考:大内山動物園 キバタン
http://www.oouchiyama-zoo.com/animals/6618/
仮にキバタンをお迎えし、その子が50年生きたと考えてみましょう。お迎え時の飼い主の年齢が20歳だとすれば、キバタンが寿命を迎えるのは70歳の時、ということになります。
さて、その子が寿命を全うする時…
あなたにはその子の面倒を見続けるだけの十分な体力があるでしょうか?
十分な資金・経済力を維持し続けることは可能でしょうか?
病気やけがで動けなくなった時や自分が死んでしまった後、
確実に後を継いでくれる人はいるでしょうか?
この問い全てに胸を張って「YES」と答えられないのであれば、大型オウムのお迎えをすることはやめた方が良いと言わざるを得ません。
大型オウムを飼いたい方の中には自分が動けなくなったら、死んでしまったら、その時は動物園や保護団体に引き取ってもらえば良いと考えている人もいることでしょう。
それは何故か。その答えは、私のいた園で飼育されていた2羽がどちらも毛引き症になってしまっていたからです。
園では2羽のうち1羽はバックヤードに、もう1羽(私の指を噛んだRのこと)は表に出ていました。Rについては私と担当者が暇を見つけては構いに行き、さまざまな形状や仕組みのおもちゃを作って与え、お客さんに構ってもらっていましたが、しかしそれでも寂しく、暇だったようです。元々毛引きをしていましたが症状が日に日にひどくなってしまい、私が退職した数年後にはとても表に出せない見た目になってしまったそうです。
そう、動物園にはたくさんの動物がいるため、どれだけ心を砕いても1羽にずっと構ってあげることはできないのです。
また営業時間内であれば飼育員やお客さんがいますが、営業時間外は誰もいなくなるため、その間は必ずひとりぼっちになってしまうのです。
確かに動物園に引き取ってもらえば、その子の命そのものは未来に繋がっていくことでしょう。しかし上記でお話したように、動物園ではその子はほぼ確実に寂しく、暇で退屈な余生を過ごすことになる、ということを覚えておいてください。大事に飼ってきた子に寂しい思いをさせたくないのであれば、動物園や保護施設に引き取ってもらうことは考えない方が良いでしょう。
大型オウムを飼うべきでない理由のまとめ
非常に長くなってしまいましたが、ここまで読んで下さった方がいればまずは感謝の気持ちをお伝えしたいです。
最後にまとめると、私が考える「大型オウムを飼うべきでない理由」は
- クチバシの力が強すぎること
- 鳴き声が大きいこと
- ストレスに弱いこと
- 寿命が長いこと
以上の4点となります。寿命が長い大型オウムを健康に飼育し続けるためには十分な資金と設備、体力と時間に加えて一緒に飼育してくれる人(後を継いでくれる人)の存在が欠かせないことが伝わっていれば嬉しいです。
実は大型オウムは野生において絶滅に近い状態に置かれている種や、ワシントン条約の付属書に掲載されている種も少なくありません。ペット向けの需要が増せば野生個体の密猟・密輸が増え、さらに野生におけるオウムたちの数が減ってしまう可能性もあります。
あえてそのような状態にある鳥たちを家族に迎える必要があるのか、上に書いた4つのポイントを知ってもなおお迎えするという選択肢を取るのか…大型オウムを飼育したい方はぜひしっかりと考え、周囲にもよく相談してください。
なお現在の日本では、愛護動物を虐待したり捨てたりする(遺棄する)ことは犯罪です。オウムに限らず、動物を一度迎えてしまったら「こんなはずじゃなかった」「もういらない」と捨てることはできません。愛護動物を遺棄した場合、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処せられることを覚えておいてください。