動物に関して自分が知っていることを誰かに伝えてたい、知って欲しい。
そんな気持ちから本日より「絶滅の危機に陥っている動物シリーズ」と題して、一見身近に見えるけれど野生下では絶滅の危機に陥っている動物たちについてまとめていこうと思います。
初回は当ブログ管理人が愛してやまない動物の1つ、トラに関する特集です。
100年前には9種、今は6種しかいないトラの仲間たち
日本では全国各地どこの動物園に行ってもみられる動物の1つ、トラ。
世界最大のネコ科動物である彼らですが、正直大して珍しい動物ではないと思っている方も少なくないのではないでしょうか。
トラは全部で9つの亜種にわかれていますが、実はそのうち3種が絶滅しています。
現存しているトラ
- ベンガルトラ
- アムールトラ(シベリアトラ)
- アモイトラ
- スマトラトラ
- インドシナトラ
- マレートラ
既に絶滅したトラ
- バリトラ
- ジャワトラ
- カスピトラ ※ロプノールトラはカスピトラと同一種とします
100年前に10万頭いたトラ、今の数は…?
20世紀初頭には10万頭生息していたといわれる彼らですが、現在は全世界に生息する3000~5000頭程度しかいないといわれています。
彼らがここまで激減した理由は、ほぼ100%人間の活動が原因です。
トラが激減した理由
野生のトラが激減した理由はいくつも考えられますが、以下の4点が大きい理由なのではないかと考えられています。
- 開発による生息地・獲物の減少
- 毛皮目的の狩猟・密猟
- 害獣としての駆除
- 虎骨酒(ここつしゅ)や漢方薬目的の狩猟・密猟
1.開発による生息地・獲物の減少
野生のトラが住んでいるのは、アジアやロシアの木々が生い茂る深い森です。トラはそのしましま模様を生かして森の中に潜み、ヤギュウやシカ、イノシシやワニなどを食べて暮らしています。
トラのように大きな肉食動物が生きていくためには、広大な生息地と豊富な食料が必要です。しかしトラが住んでいた森は私たち人間がどんどん開発を進めてしまい、結果彼らの住処や獲物を奪ってしまいました。
トラの中でも特に大きいアムールトラの体重は300Kgを超えることもあり、その体を維持するためにはたくさんの動物を食べる必要があります。野生に比べると運動量が圧倒的に少ないと考えられる、動物園で暮らすトラでも週に10~20Kgの肉を食べています。獲物を求めて広大ななわばりを動き回る野生のトラは、もっとたくさんの肉を食べることでしょう。
住みかが開発されてしまい、獲物が十分に取れなくなってしまったら…悲しいことに、野生のトラには生きる道がありません。
2.毛皮目的の狩猟・密猟
その美しい毛皮を目的とした狩猟により、トラはその数を大幅に減らしてしまいました。
美しい縞模様が入った毛皮を欲しがる人は多く、高値で取引されました。トラが生息している地域は発展途上国も多いため、トラを1頭殺して売ればしばらく生活ができるだけのお金が手に入ったようです。多少危険を冒してもトラを殺そう、そう思ってしまう人が多かったのだろうと想像がつきます。
100年前の人間は動物をとりすぎたら絶滅してしまうこと、1つの種が絶滅してしまうと自然界のバランスが崩れてしまうことを知らなかったのか、あるいはそんなことより自分たちの生活の方が大切だったのでしょう。自分の生活が安心安全なものでなければ、動物たちに気を使うなんてことはできっこありません。
現在はワシントン条約の関係上まっとうなルートでは購入できないはず…ですが、毛皮を目的とした密猟は絶えず、違法な取り引きは今現在も続いているようです。
3.害獣としての駆除
人間を害する、家畜を害するという理由から多くのトラが銃殺・毒殺されました。
トラの中でも特に大きいアムールトラは体長2.5m、体重は300Kg以上にもなり、特にはヒグマすら襲って食べてしまう強い動物です。そんなトラと人間が1対1でやりあえば、人間に勝ち目などないでしょう。しかしトラがいかに大きくても強くても、銃でズドンとやられてしまったら、トラバサミ(罠)にかけられてしまったら…トラになす術はありません。
トラを銃で撃つなんて!罠にかけるなんてヒドイ!と思う人もいることでしょう。しかし自分が暮らしている町に大きなトラが現れたら、大切に育てている家畜がトラに食い荒らされたら…トラが住む地域においては、時にトラを撃ち殺さなければ人間の命や生活が脅かされることもあったのではないかと想像がつくかもしれません。
日本にトラはいませんが、この状況はクマにばったり出会う…というものが近いでしょうか。ツキノワグマでも十分に怖いですが、私は何があっても野生のヒグマとばったり出会いたくないです。死んでしまう。
4.虎骨酒や漢方薬目的の狩猟・密猟
神聖な動物として扱われることも多いトラは、一部の地域では骨や臓器に薬効があると信じられてきました。
中でもトラのすねの骨を焼いて漢方薬と一緒につけた「虎骨酒(ここつしゅ)」は滋養強壮の効果がある、リウマチに効くとされて珍重されてきたそうです。
トラは骨だけではなく他の臓器や肉も薬効があると信じ、高値でも買い求める人が多いのが現状です。成分上薬効がないと多くの科学者が唱えているにも関わらず、現在も漢方薬目的の密猟が絶えません。
トラを守るために私たちができること
この記事を読んで下さった方の中にはトラがそんな状態に陥っている、という事実すら知らなかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そしてトラのために何かをしたい!と思う、優しい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし日本には野生のトラはいません、そして彼らが暮らしているのはインドネシアやロシアなど遠い場所です。直接トラたちに何かをすることは難しい…では私たちにはどんなことができるのでしょうか。
1.トラの現状を知ること
まず私たちにできるのは、トラたちが置かれた現状を知ることです。
なぜなら海外のマーケットでは虎骨酒をはじめ、トラの体を使った漢方薬が違法に販売されていることがあるからです。もしあなたがトラたちが置かれている現状を知っていたら、それらを買わないという選択肢をとることができます。
もちろんそんな場面に出くわすことの方が少ないでしょう、しかし知識を得ることは間接的にトラを守ることに繋がるものと考えられます。
※なおトラは「ワシントン条約」の附属書Iに掲載されている動物です。ワシントン条約を知っているかどうかは関係なく、彼らの体の一部を使った製品を日本国内に持ち込むことはできません。
詳細はこちら:税関ホームページ
2.環境保護団体に募金すること
もっと直接的に保護に携わりたい!という方には、トラをはじめ野生動物を保護する活動を行っている環境保護団体に募金し、彼らの活動をサポートするという手段をおすすめします。
トラやゾウなど大型の野生動物の保護を行っている環境保護団体で有名な団体といえば、世界100か国以上で環境保護活動を行っている「WWF」です。
募金といっても意外とお安く、毎月500円~の会費を払えばWWFの会員になることができます。会員になると送られてくる会報には動物の情報や写真がたくさん掲載されていて、非常に勉強になります。
まとめ・トラの現状が少しでも伝わりますように
動物園ではごく普通に見られる動物、トラ。
しかし野生下での彼らの命は風前の灯火であること、そして彼らをここまで追い詰めたのは私たち人間であることが伝わったでしょうか?
私たちの日常生活は何かと忙しく、ストレスに満ちています。そんな日常生活の中で、野生のトラについて考えることはほとんどないことでしょう。しかし世界にはこんな事実があることを知ってもらえたなら、ちょっとだけでも彼らについて興味を持ってもらえたなら嬉しいです。
特に海外旅行に行った時はトラの密猟に拍車をかけるものを手に取らないよう、ほんのちょっとだけ注意をして頂けたら幸いです。
トラに関する記事リンク集
絶滅危機のトラ、6亜種のみ残存 研究で確認(AFPBB News)
おすすめのトラに関する書籍
野生ネコの百科
トラをはじめユキヒョウ、チーター、ジャガーなどメジャーなネコ科動物から、マーゲイ、ジャガランディなどちょっとマイナーなネコたちまで幅広く野生ネコについて学べる一冊です。
彼らの種類や生態、置かれた状況などありとあらゆる情報が詰まっています。フルカラーで写真もたくさん掲載されているため、見ているだけでも十分楽しめます。