現在とある小さな動物園の飼育員として働いております、三日月(@trickwolves)です。
この1週間で色々ありまして、今まで自分が勉強してきたことや経験してきたことはただ勉強しただけ、経験しただけでも素晴らしい技術なのだということを知りました。
動物系の勉強をした人に対して、私たちはそれなりにすごい技術もちなんだということを声を大にして伝えたい。私も自分に誇りを持ちたく、本日の記事を書きます。
「動物を扱えること」は立派で特別な技術だと思う
私は動物系の4大を卒業し、その後1年弱養豚業に従事しなんやかんかあって今飼育員になりました。幼いころから喘息持ちだったのと借家住まいだったため熱帯魚や虫以外は飼ったことがなく、自宅で哺乳類(ウサギ)をペットとして飼い始めたのは4年前です。
大学生の時はミニブタとヤギの世話をしながら家畜について勉強しました。動物園の飼育員を志していたため、動物園実習も行きました。そこでトラやライオンに携わらせてもらいました。
これらの経験から哺乳類に限りますが、動物の扱い方法はある程度ですが心得ています。
その心得というのは動物の名前やその生態や食性などの、動物に関する直接的な知識だけではありません。
動物との距離の取り方や関わり方、道具の名前や扱い方など動物に関する”知識ではない体に叩き込まれた経験値”も含まれます。
動物系の仕事に携わりたいと考えて必要な知識を得るため主に高校、大学、専門学校で座学と実学を学ぶ方は多いと思います。
とはいえ動物系の仕事、中でも飼育員の仕事は狭き門のため諦めて動物とは関係のない仕事に就く方も多いと思います。私もそうでした。だけれど、何年も動物に携わって得た知識と経験は何者にも変えがたい特殊な技術です。
私たち動物に携わってきた人は動物に携わってこなかった人には出来ないことが無意識にできるのです。不思議なもので何年経っても頭が、体がどうやって動物に関わればいいか覚えています。
動物に関する就職に役立つような資格は多くありませんが、私たちは動物に関する特殊な技術を持っているのだと胸を張ってもいいと思うのです。
餅は餅屋、まさにその通りの言葉だと思う
餅は餅屋
餅は餅屋とは、何事においても、それぞれの専門家にまかせるのが一番良いということのたとえ。また、上手とは言え素人では専門家にかなわないということのたとえ。
この言葉、本当にその通りだと思う。
前職の上司がよくこの言葉を口にしていました。上司のことは文字通り死ぬほど嫌いだったのですが、その言葉だけはまさにその通りだなと思っていました。
インターネットの発達に伴い、わからないことはネットで調べれば割合なんとでもなってしまう世の中ではあります。ですが付け焼き刃の知識の素人より、専門家に頼んだ方が良い結果が望めるのです。なぜなら知識だけでは体は動かないからです。
動物関係で言えば図鑑や色々なメディアで得る動物の情報は貴重なものですが、動物の種類ごとの攻撃範囲や間合い、安全地帯なんてものは実際携わらなければ知りえるものではないでしょう。
本気になれば人間ごとき大怪我をさせたり、あるいは殺したりできる動物は多くいます。
可愛い可哀想だけじゃ動物の仕事は務まらない
動物はどんな子でも可愛いです、私も哺乳類から鳥類からどんな生き物もとても好きです。だけれど、可愛い可哀想だけでは動物に携わる仕事は務まりません。
飼育員の仕事は基本朝から晩まで掃除です、毎日糞尿まみれです。
動物が怪我や病気をして血や膿が出ることも、怪我に蛆が湧くこともあります。
治療のため動物に注射針を刺したり、膿を絞り出したりすることもあります。
ある動物を生かすために、ある動物を殺さざるを得ないこともあります。
動物を苦しみから救うために、苦渋の決断でその命を絶つこともあります。
動物関係の仕事は可愛いとか可哀想とかそんな生半可な気持ちでは絶対に、到底やり切れません。
動物業界未経験、動物に関して勉強したことがないという方が同じ仕事に携わっても良いのですが、それならば文字通り死ぬ気で勉強して欲しいと思います。ただ動物が好きだから、可愛がりたいからという気持ちだけで携わられると最終的に負担がかかるのはその可愛い動物たちです。
動物の仕事だけではなくどんな業界にも言えることですが、業界未経験のズブの素人とそれについて勉強した人はそもそもスタートする位置が違うのだから、素人の方は死ぬ気で勉強しなければ追いつけるわけがありません。同じスピードで進んだとしたら、その差は人生が終わったって変わりっこないのですから。
人手不足が嘆かれる世の中です。
未経験者OK!とい謳う仕事は多くありますが、それは未経験でもいいけどこっちはちゃんと教えるからそっちもきちんと勉強してくれな!!という意味だと思うのです。
例えばの話
動物を勉強した人や草食獣を飼っている人に「チモシー取ってきて!」といえば間違いなく取ってこれますが、知識がない人は取ってこれないでしょう。
チモシー
イネ科の多年草で,ヨーロッパ原産。牧草として有名で,アメリカをはじめ世界の牧畜国で広く栽培されている。
仕事の中でチモシーという言葉がその人に通じなければまずこの地点で仕事が遅れます。仕事が遅れればこなすことが出来る仕事が減る、減ってしまったおかげで動物のケアにかけられる時間が減る…という悪循環の元になりかねません。
知らない単語が出てきたら、自分がわからないことがあったなら今の時代スマホなり携帯電話なりを持っていない人の方が少ないのだからわからないならすぐに調べればいい。図書館に行けばいい、聞いてメモ取って何度も予習復習して覚えればいい。
勉強をした人たちにとっての当たり前が当たり前でない、同じ土俵にすら立てていないことに焦りを覚えないなら、必死で食らいついて来る気概がないのならば異業種になんて入ってこないで欲しいのです。
私の話
少なくとも私は前職の時は死ぬ気で食らいつきました。デスクワークなんて未経験でしたので電話対応や接客方法を脳内でシミュレーションしたり、新人講習でもらったパンフレットを何度も読み返したりしました。上手くできなかった時はなぜ上手くできなかったのか、どうしたら上手く出来るのかを考えることを常に心がけていました。
その結果担当のお客さんにはうちの社員みたいなもんだよと言って貰え、お客さんがお客さんを紹介してくれて新規顧客は増え、退職時には電話が鳴りやまずデスク一面に伝言メモが貼られるくらいにはなることが出来ました。
本当に、身も心も削って頑張りました。削りすぎてうつ病になったけどね★
まとめ・自分の技術や歴史に自信を持てると素敵だなって
動物業界に限らず、人それぞれ今まで勉強したり経験したりして作り上げて来たものは全部特別な技術だと思います。決して軽視してはいけないものだと思います。
現代日本を生きるにあたって特別役に立たないと思われる技術も多いかもしれないけど、どんな技術も経験も必ず何かに生きます。間違いなく生きます。

自分が当たり前だと思っていること、当たり前だから大したことがないと思っていることは人からしたら大したことであることも多いのです。
私も私に自信が持てるよう、日々学ぶことも前に向かうことも止めずに日々生きていきたいです。人生あと何日残っているかわかりませんし、後悔がゼロは無理だとしても後悔が少ない人生にしたいです。