三日月(@trickwolves)です。
私はとある小さな小さな動物園の飼育員です。仕事をしていると「ペットを引き取ってもらえませんか?」と言われることが割と高めの頻度であります。
とりあえずお話しを聞かせて下さいとお伝えすると概ね「オスとメスを一緒にしていたら増えてしまった」という、言ってしまえばお粗末な理由をおっしゃる方が多いです。
あのですね
オスとメスを一緒にしていたらそりゃ増えますがな( ゚Д゚)カッ!!!!
動物について勘違いしている方にこの記事が届き、そういった方が1人でも減ることを祈りつつ願いつつ、自分の知っている知識をなるべくわかりやすく書いてみます。長くなりますがお付き合い頂けますと幸いです。
1匹で暮らしている動物は必ずしも孤独・不幸ではない
勘違いしている方が多いのですが、動物は人間と異なり1匹でいること=不幸せではありません。
その証拠に、野生下では(繁殖期以外は)1匹で暮らしている動物も少なくありません。
主に群れで暮らす動物例
ニホンザル、オオカミ、ライオン、リカオン、シマウマ、ヌー、モルモット、ハイラックス、ミーアキャット、プレーリードッグなど
主に1匹(単独)で暮らす動物例
トラ、ジャイアントパンダ、レッサーパンダ、ヒョウ、ユキヒョウ、ツキノワグマ、ホッキョクグマなど
仕事をしていると「この子は1匹しかいないのねぇ、寂しいわねえ」とか「1匹しかいなくてつまらなそうですね」とか直接言われたり、あるいはアンケート用紙にそういったことを書かれたりすることが多々あります。
確かに、本来群れで暮らしている動物が動物園の都合で1匹展示になっていることがあります。それは動物園の都合・人間のエゴであり、動物に対して負担を強いている環境になってしまっていると言えるでしょう。
ただし元々単独行動する動物が1匹で展示されている場合、その動物は本来の生態に近い状態で暮らしていることになります。
元々単独行動をする動物を同じスペースに入れたら闘争が起きて、最悪の場合は殺し合いになります。特にオス同士の場合、どちらかが死ぬまで闘争する可能性が非常に高いのです。
つまり本来単独行動をする動物の場合「1匹で展示されているから寂しい」ことはなく、1匹であることが快適である(はず)です。
※私は人間なので動物の気持ちは100%解りません、ですので(はず)と書かせて頂きました。
元々は群れで暮らす動物であってもオスとメス各1匹ずつしかいない場合、繁殖させる予定が無ければ動物園側からすれば一緒にすることは出来ません。
人間はオスとメスを一緒にしておいても、ただやみくもに増えるということは基本的に考えづらい生き物です。しかし他の動物たちは、オスメスを一緒にしていたら際限なく増えるものです。
「殖えること(ふえること)」「自分の遺伝子を残すこと」は動物本来の本能です。野生下では一度仔が出来たらといって無事成長できるとは限らないため、動物たちはチャンスさえあればどんどん殖えようとします。
とはいえ動物はただ殖やせばよいと言うものではなく、繁殖においてはしっかりと計画を練る必要があります。動物園としては動物の血統を管理し、生活させるスペースを確保しなければなりません。
また同じ親の子どもばかり殖やしてしまうと、次の世代の繁殖に問題が生じる可能性があります。そのため貴重な動物であればあるほど、国内外の動物園が協力してきちんと血統管理がなされているのです。
動物園が行っている動物種の保存活動については、日動水のサイト(種の保存・自然保護)をご参照下さい。
また例え希少でどんどん殖やしたい動物であっても、生活させるスペースがなければ殖やしたところでどうにもならなくなってしまいます。
世の中には1腹で10匹以上産まれる動物もいます。10匹産まれたと仮定して、新たに維持管理できるスペースがないから殖やさない・殖やせないという理由で動物を単独で管理するのは必要なことであり、1つの愛情の形だと思います。
動物のオスとメスを一緒にすること=繁殖させること
先程も書きましたが、オスとメスを一緒にしていたら大概の動物は殖えます。
1年中繁殖可である動物であれば、ほぼほぼ確実に殖えます。際限なく殖えます。
ペット動物で言えばウサギやモルモット、ハムスターあたりの動物は基本的にオスメス一緒にする=繁殖させる行為です。これらの動物を飼っている、もしくは飼おうとしている方には覚えておいて欲しいです。
実は(?)「人間の幸せは結婚と子育てにある」と考える方たちを主に、「動物たちも仔を産ませることが幸せである」と考える方も多くいらっしゃいます。
ですが私は”生まれた仔を全て幸せに出来る環境および自信が無い場合は、動物に仔を産ませるべきではない”と考えます。むしろ仔を産ませないことも、1つの大きな愛情であると思います。
先にあげた動物で考えますとウサギは平均1~10匹、モルモットは平均3~4匹、ハムスターは平均10匹もの赤ちゃんを産みます。
10匹全てがメス、全てがオスということはまずありえないでしょうから、もし5匹オスで5匹メスだった場合オスメスで分けて飼わなければなりません。分けないときょうだいの間、親子の間でも容赦なく殖えてしまうからです。
動物に仔を産ませる場合は自分で飼えるのか、自分で飼えない場合は貰い手を見つけることが出来るのか、よくよく考えてみて下さい。きちんと面倒を見れない動物の仔を増やすことは誰も幸せにしません。むしろ関わる全ての命を不幸にしてしまいます。
動物を扱う立場から、オスとメスを一緒に飼わざるを得ない場合はどちらか、あるいは両方とも避妊・去勢手術をすることを強くおすすめします。二度と子供を産めないなんてかわいそうだと言う方もいらっしゃるでしょう、ですが避妊去勢は望まない妊娠のリスクを無くすだけではなく生殖器の疾患をも防げると言うメリットもあるのです。
また発情による体や精神への負担も無くなるため、性格がおだやかになったり長生きしたりする個体もいます。避妊去勢は可哀想なだけではありません、動物をペットとして飼うのであればデメリットを差し引いても余りあるメリットがあるものです。実際私も自宅で飼っているウサギは1歳半くらいの時に避妊手術をしています。
高齢のメスウサギは9割以上が子宮疾患にかかると言われています。実際子宮疾患が原因で亡くなる個体は少なくありません。
参考URL:ウサギの子宮疾患|みわエキゾチック動物病院|豊島区駒込
まとめ ※忙しい方はここだけ見て下さい
- 動物園動物は1匹までいるからといって必ずしも不幸ではないし寂しくはない
- 人間以外の動物はオスメス一緒にしたら基本的にはどんどん増えるものである
長々書きましたが本当に本当に伝えたいのはこの2点だけです。特に2つ目は切実に知って頂きたいな、と思います。
これらは動物に携わってきた人たちにとっては当たり前で、あえていうまでもない事実です。しかし動物に携わってこなかった方たちにとっては、目から鱗の事実らしい…というで、このようにまとめさせて頂いた次第です。