三日月(@trickwolves)です。
先日このような記事を書きましたが、残り少ない飼育員生活の中でもう1つお願いしたいことがあります。
動物園の動物の展示場はガラスやアクリルで仕切られていることが多いです。そしてそのガラスやアクリルには「叩かないで下さい」と書かれていることもまた多いと思います。
動物が寝ていてつまらないと思う気持ちも、動物の視線がこちらにきている写真を撮りたい気持ちもわかります。それてもお願いしたいのです、ガラスやアクリルは叩かないで下さい。
ガラスやアクリルを叩くと中では猛烈に音が響く
お客さん側からすればガラスを軽くトントンと叩いたとしても実は建物内にものすごく音が響きます。ドンドン叩いたらなおさら響きます。
この地点でお分かりになる方も多いかと思いますが、ガラスを叩くことは動物にとってとてもストレスになります。
ガラスもアクリルも音が伝って建物内で反響するようで、軽く叩いただけでも「あ、また叩いてる人がいる…」とすぐにわかる程度にかなりの音量で響きます。
トントン叩いて動物がこっち見てくれた!と喜んで写真を撮る方がいますが…それは「うるさいな」と思って不快になっている可能性が高いと思って頂きたいのです。正直ガラスから少し離れて作業している飼育員ですら「ああまたか、うるさいな…」と思うのですから。
私は人間なので動物の正確な言葉はわかりません。ですが人間よりはるかに優れた聴覚を持った彼らにとって軽い気持ちのガラスガンガンがどれだけうるさいものか、ちょっとだけ考えて頂けたらと思います。
子供でもダメなものはダメ、親御さんが注意して
まずガラスを容赦なくドンドンやることが多いのは子供さんです。
幼稚園や小学校低学年の子は結構容赦なく、平手でバシバシガラスを叩く子が多いです。そうだよね、動物さんにこっち見てほしいからだよね、わかるよ。でもね、めっちゃ音響くの。
親御さんのリアクションもすぐにやめさせるかへラヘラ笑って済ますかどちらかの方が多いのですが、出来れば何故ガラスを叩いてはいけないのかきちんと理由を説明してあげて下さい。何故ダメなのかという理由がわかって納得すれば同じことはやらないでしょう。
世の中小さいからという理由で許されることと許されないことがあります。目に余るようならスタッフからも注意しますが基本しつけは親御さんのお仕事ですよ。
実際何度も注意はしていまして、幸いまだ逆ギレされたことはありませんし大体はわかって頂いてすみませんと仰って頂けるので有難いと思っています。
ただ何だこいつうぜぇな…みたいな顔をして何も言わずに去っていく親御さんには何度か遭遇しています。仕事とはいえ、スタッフだって傷つくときは傷つきますよ。スタッフだって注意なんてことはしたくありません、ですが目に余るようであれば言わざるを得ないのです。
1回建物の中でガラスをガンガン叩いた時にどれだけ中に音が響くか体感して頂きたいと思ってしまいます。
ガンガン常習犯その2は年配の男性が多い不思議
ガラスを容赦なくガンガンやることが多いのは子供ばかりでなく、実はかなり年配の方(主に男性)もやる方が多いです。
そういった方はぱっと見60歳〜くらいの方が多いように見受けられるのですが、動物愛護とか動物福祉そういった認識が薄い世代で動物に関する知識が薄い方なのかなと思っています。
ガラスをガンガンやっておお、こっち見た!とか起きた!とか言うのならばまだしもガンガンやった後謎に動物に対して暴言を吐く方が多いのがとても不思議です。
あんまり年上の方に注意をするのもどうかなぁと思いつつも注意をするのですが、注意されるとすごすご退散していく方が多いです。日頃の鬱憤が溜まっておられるのかもしれませんが、それを動物にぶつけるのはおやめください、お願いします。
動物園のガラスを叩くのはNGという認識が広まりますように
動物園動物は自分の意思でどこかに行くことも逃げることもできません。それは人間のエゴであり、動物園のエゴであります。
ただ今そこにいる子たちはそうそう野生になんて戻れません、動物園生まれならなおさら。野生下に戻ってもほぼ即死でしょう。であれば今そこにいる子たちをなるべく幸せに、穏やかに生活させてあげたいと多くの飼育員が考えています。
ほんの少しだけで良いので動物たちに優しい気持ちを分けてあげて頂けたら嬉しいです。
以上、小さな小さな動物園の一飼育員からのお願いでした。
2018/11/24 加筆修正